都市部の大手タクシー会社では、自社で整備工場を保有し、タクシー車両を自前でメンテナンスをする会社・営業所がいくつかあります。
自動車整備士資格を所持している有資格者をタクシー会社が採用し、日々の整備業務に就かせており、欠員が出た場合は募集をかけていることもあります。
地方では、そのような整備工場を自前で持つタクシー会社はほとんどありませんが、都市部でタクシー運転手をしていた方が、数年前地元に戻って来て同じ職場で同僚となり、お話を伺うこともあり、都市部のタクシー事情においても知り得ることも増えてきました。
また、タクシー車両は30万キロメートル以上走行している車両がザラにあり、ドライバーをしていると、不具合や故障が発生する箇所やパターンはどの車両も大体同じで、整備依頼をする場合もパターンが決まっています。
そこで今回は、タクシー会社が募集している「タクシー整備士」の仕事内容やそのなり方、一般の自動車整備士と比較したメリット・デメリット、待遇などについても解説します。
タクシー整備士になるには?
タクシー整備士、とりわけタクシー車両に特化した整備の仕事をしたいのであれば、以下の方法(就職先)があります。
整備工場を保有する大手タクシー会社(都市部)
都市部の大手タクシー会社には、自社で整備工場を抱えているところがあり、新卒・中途採用問わず募集をしているところもあります。
実質的に「タクシー整備士」になるには、新卒・中途問わず、この都市部の整備工場を自前で抱えている大手タクシー会社に就職することを意味すると言って過言ではありません。
街の自動車整備工場
タクシー車両は毎日のように稼働するため、軽微なものも含めた自損事故や、時には交通事故も一般車両と比較して起こりやすく、板金塗装や部品取り車両からの部品交換などは、個人経営の街の自動車整備工場に委託していることもあります。
明確な線引きはなくとも、車両の整備やメンテナンスというより、板金塗装などの業務がメインとなるかもしれません。
タクシー車両が入庫されないときは、他の一般車両等のその会社が請け負っている仕事をすることになります。
よってそのような業者は、タクシーの整備をする「タクシー整備士」とは言い難いのですが、それらの車両に携われることはあります。
クルマの電装品取付け専門業者
タクシーには、後述する料金メーター等の様々な装備品・電装品があり、車両そのものの整備ではなく、タクシー装備品の取付・メンテナンスを専門に取付を請け負っている専門業者があります。
(例:○×電機工業所・有限会社△□電装など)
タクシー車両の電装品等の取付けがないときは、その会社で請け負っている仕事をすることになります。
よって、電装品を取扱う業者であるため「タクシー整備士」とは言い難いですが、タクシー車両に携わることはできます。
ちなみに、このような業者はタクシーの料金メーターに詳しいため、公的機関が年に1度執り行う「メーター検査」のスタッフとして、駆り出されることもあります。
そのようなところを調べて、募集があれば応募してみるのもひとつの方法ですが、個人経営のような小規模・零細企業が多く、新卒ではまず難しいと思われ、即戦力の中途採用であれば、タイミングによっては募集していることもあるかもしれません。
ですがやはり、自動車整備士を所持している前提で、整備工場を自前で抱えている都市部の大手タクシー会社に就職することが、タクシーを専門に整備する「タクシー整備士」になることができます。
タクシー整備士の仕事内容
まず応募資格として、タクシー車両を整備する仕事内容ですので、前提として「自動車整備士」の資格を所持していなければなりません。(3級以上を求められることがほとんどです)
一般的な自動車整備工場で扱う車両とは異なり、LPGを燃料とした車両が多いタクシーの整備は、特殊な一面もあり、一般的な車両整備にプラスして、専門的な知識や技術が求められます。
車検・法定点検
タクシー車両は、1年に1度の車検と、3か月に1度の法定点検(定期点検)があります。
自社で整備工場を持つタクシー会社は、当然ながら保有する車両も多いため、毎日のように法定点検や車検の対象車があると言っても過言ではありません。
不具合車両の修理・消耗部品の交換など
都市部の大手タクシー会社では、走行距離30万km程度を目安に代替えするのが一般的ですが、それでも、不具合や調子が悪いなどの症状が出てくるものです。
法定点検を3か月に1度行い、消耗部品は定期的に交換していても、GO-STOPを頻繁に繰り返し、毎日稼働するタクシー車両は、一般ユーザーの車両と比較しても桁違いに過酷な使われ方をします。
ブレーキパッドの摩耗やランプの球切れなどは消耗しやすく、それらのメンテナンスは頻繁にあります。
車両が古くなってくると、個体にもよりますが必然的に、修理する頻度が増えてきますから、それに対応しなければなりません。
地方では走行距離50万キロメートル程の車両はザラにあり、そのような車両を乗り継いできたドライバーからすると、例えばパワステのオイルが漏れる箇所は、どの車両でも同じところから漏れるなど、不具合が出る箇所は大体同じで、数をこなすことでスキルは身に付いていきます。
LPG仕様車のメンテナンスが主業務に
都市部から順次、次世代タクシーとしてLPGハイブリッド車のトヨタジャパンタクシーに代替えが進んでおり、従来のクラウンセダン(スーパーデラックス・コンフォート)や日産ではセドリックセダン・NV200と合わせて、LPG仕様車の整備が主な業務となります。
タクシー会社によっては、例えば、トヨタのシエンタ・プリウス・カローラフィールダー等の、ガソリン車やハイブリッド車をタクシー車両としているケースもあります。
また、大手のタクシー会社は、「ジャンボタクシー」と呼ばれる乗員9名までの車両も保有しており、トヨタハイエースグランドキャビン・アルファード・日産エルグランド等のワンボックスカーまたはミニバンにおいても、同様の整備をします。
タクシー装備品の取付けも
タクシーは特有の装備品・電装品が多数あり、これらの取付けも業務の一つとしている会社もあります。
タクシーの装備品としては、
- 料金メーター
- プリンター(領収書等のレシート印刷)
- GPSを用いた配車システムの端末
- スマホアプリ(GO・DiDi等)対応端末
- カーナビ・ETC
- 無線機
- カードリーダー
- 屋根上の社名表示灯(行灯)・助手席前の表示灯
- 緊急時のSOS発信システム
- ドライブレコーダー・車内防犯カメラ
- 防犯ボード(運転席側)
- レバー式の後席左側自動ドアの実装(クラウンコンフォート)
- 社名(車両番号)入れ(カッティングシート)
など多岐にわたり、配線や取付けに関しても覚えなければなりません。
但し、整備工場を保有しているタクシー会社の中には、車両の整備のみ請負い、上記の装備品の取付けは専門業者に委託していることもあるかもしれません。
車両の内装メンテナンス・清掃
車両の内装を専門にメンテナンスや清掃することを、業務のひとつとしている会社もあります。
タクシー車両は、毎日のように何百キロメートルと走行するため、エンジンやボディが傷むのも当然ですが、内装側、特に運転席シートや後部座席シート、特にトヨタクラウンスーパーデラックス・スーパーサルーン(上級仕様車)は、モケット調のため、フロアや肘掛など人が触れるところは傷みやすく、補修や交換・張替えをするなどメンテナンスが必要になってくるケースもあります。
ドアの内張りやハンドルのレザーの張替え、シートカバーの製作なども、手掛けていることもあります。
系列会社からの修理依頼も
タクシー車両はLPG仕様車も多いため、それを専門的に修理することで、実力が養われていくことでその道のプロになります。
よって、例えば系列のタクシー会社から、LPG仕様車を他所で修理を依頼しても直しきれない場合は、頼られることもあるかもしれません。
要は、イレギュラーで自社以外のLPG車の修理依頼が入ることもあるかもしれません。
実際に、以前管理人が担当車として乗務していた車両は、走行距離50万kmを超え、走行中に突然エンジンが停止し、コントロール不能に陥ることが度々起こり、近隣の一般の整備工場に修理依頼をしても直しきれずに、結局数十キロメートル離れた親会社の系列の整備工場まで、修理に持ち込んだこともありました。
自動車の整備の仕事のため、一般車両の整備と基本的には変わりませんが、タクシー車両はLPG仕様車が多いため、数をこなすことで専門的な知識や技術が身に付きます。
タクシー整備士になるメリット・デメリット
タクシー整備士に就くメリット・デメリットについて、一般的な自動車整備士業務と比較したメリット・デメリットを列記します。
メリット
日勤勤務になる
タクシー会社では運転手や配車業務において、24時間体制若しくは深夜までなど夜勤勤務は当たり前ですが、整備業務は基本的に日勤勤務になる会社が多く、規則正しい生活ができます。
当番制で夜勤勤務がある会社もあります。
接客をしなくてよい
例えば、自動車ディーラーの整備士は、持ち込まれた車両において、メンテナンスやオイル交換等をした場合でも、直接お客様とお話しして修理箇所の説明や支払いの受取り等もしなければなりません。
ですが、タクシー会社内の整備では、お客様は社内の運転手であり、不具合箇所等の気になるところがあれば、事前に運転手から指定用紙に記入されているため、接客を意識することはあまりありません。
ただ、同じ会社内の整備士とドライバーという関係上、車両の不具合やトラブルが起きると、書面上では細かいニュアンスが伝わりにくいときなどは、直接ドライバーに「どんな時に起こるのか?症状の特徴」などを聴き取ることもあります。
整備する車両の車種が少なく覚えやすい
タクシーはLPGを燃料とする車両が多く、車種も少ないため仕事を覚えやすいことも挙げられます。
業界大手のタクシー会社で安定している
自社で整備工場を保有するタクシー会社は、業界大手であるため経営基盤は安定しており、会社が倒産・廃業する可能性は低いと考えられます。
ただ、コロナ禍でタクシー業界の売上は落ち込んでおり、今後の状況はどの業界でもそうですが、不透明と言わざるを得ません。
ですが、減車や規模縮小などが今後あったとしても、整備士は運転手と違って整備士資格を有し、誰でもできる職種ではありませんから、真面目に仕事をしていれば生き残れることは十分に可能ではないでしょうか。
社内で職種が変われることも
また、社内・グループ会社内で「転職(異動)」もできるかもしれません。
整備士資格を所持して、「タクシー整備士」を志して入社したのですから、その職種で飯を喰っていこうとされるのは当然ですが、例えばもしも、病気やケガをしてしまい、整備士としては働くのがキツイなどの事情が生じた場合、会社の規模が大きいので退職せずとも、ドライバーや配車センター、事務系の職種に就くこともできるかもしれません。
デメリット
社内の異動
グループ会社内で整備士の欠員が出た場合、ケースバイケースで、勤務地の異動はあるかもしれません。
面接の際に、確認しておきましょう
年収・給料について
給料・年収に関しては、会社により異なるので一概に言えませんが、上述したようにタクシー整備士は、タクシー会社が直接採用するケースでは、整備工場を抱えている程の規模であるため、安定していると考えられます。
また、評価制度も確立されており、スキルアップしていくことで昇給・昇進も可能です。
その他、特段、タクシー整備士としてのデメリットに関してはありません。
タクシー整備士の求人
タクシー整備士を志したら、求人募集をチェックすることになりますが、応募する前に求人サイトを通じて、業界に精通したアドバイザーに相談されることをおすすめします。
タクQで事前に情報収集
「タクシー整備士」になるには、実質的にタクシー会社に就職するということになりますので、タクシー求人専門サイト 無料転職支援サービス『タクQ』から、問い合わせてみるのもいいかもしれません。
タクシー業界を熟知した転職コンサルタントからアドバイスをいただくことで、応募する前にその会社がどのような会社か、年収や待遇面、福利厚生、社風なども含めて知ることができます。
また、この「タクQ」を通して求人募集に応募すると、そのサイトから入社祝い金がもらえることも特典としてあります。
「タクシーに関して何でもお問い合わせ下さい」とのことなので、ドライバーを希望する方だけでなく、タクシー会社が募集する整備士に関しても、事前に相談されるのもひとつの手段です。
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転職・求人サイトから探す
自動車整備士求人に特化した株式会社レソリューションが運営する自動車整備士向け人材派遣・人材紹介サイト【Worcar】という求人サイトに登録して、就職・転職を模索するのも一つの手段として有効かもしれません。
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- 資格取得を金銭的に支援する制度がある。
- コーディネーターが転職活動をサポート。
また、サイトやYouTubeで役立つコンテンツも随時発信しており、このような求人サイトに登録して相談してみるのもいいのではないでしょうか。
まとめ:タクシー整備士⇒整備工場を保有するタクシー会社に就職
最後にまとめると、
- タクシー整備士になるには、都市部の整備工場を保有する大手タクシー会社に就職する。
- その際、転職求人サイト「タクQ」や「WORCAR(ワーカー)」などを通じて、キャリアアドバイザーに相談し情報収集する。
- タクシー整備士は一般的な自動車整備士と異なり、LPG仕様車が多く特殊な面もある。
- 仕事内容は、車両整備の他に、タクシーには様々な装備品・電装品があり、それらの実装やメンテナンスをすることもある。
といったところでしょうか。
実質的に、タクシー専門の整備士として働くには、都市部の大手タクシー会社の中から選ぶことになり、地方在住者は難しい側面があります。
基本的には一般車両の整備と変わりませんし、タクシー特有の装備品の取付けができるようになると、スキルも身に付き、社内での評価も上げていくことができるでしょう。