1988年ブルースウィルス主演「ダイハード」が公開され、2作目も好評だったことから、3作目「ダイハード3」が95年に公開されました。
3作目も前作同様ブルースウィルス演じるジョンマクレーン刑事が、テロリスト・犯人グループに立ち向かう構図となりますが、大きくジャンル分けするとアクション映画で、スリラー・サスペンス要素もあり、いくつかの伏線回収もあります。
この作品で代表的な伏線回収シーンである、アスピリンの容器で犯人側のアジトがバレたのはなぜなのか?なぜ偽警官を見抜けたのか?について、紹介していきます。
ダイハード3アスピリンでなぜ特定されたのか?
マクレーンとサイモンはお互い頭痛持ち
停職中のマクレーン刑事を、犯人グループの主犯格が警察署に電話で引っ張り出したシーンから、
- アル中の二歩手前(マクレーンの上司)
- 二日酔いで頭が痛い(マクレーン)
など、冒頭から「相棒の黒人」と犯人の指示で走り回される中盤にかけても、数回に渡りマクレーンは「頭痛」であることを強調しています。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
また、FBIが犯人グループを特定し、主犯格のサイモンを紹介したときにも、彼が「頭痛持ち」であることも調べがついており、その後のサイモンの登場するシーンでも度々、アスピリンを飲んだり目頭付近をおさえたりするなど、これでもかと言わんばかりの頭痛を強調したシーンが見受けられます。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
マクレーンはアルコール依存による頭痛、サイモンは元々の頭痛持ちで頓服を常用しているほどの人物であることを強調し、その伏線により、マクレーンが船で捕らえられてサイモンからアスピリンを受取ることにつながります。
マクレーンがサイモンからアスピリンを貰う
サイモン一派に捕らえられたマクレーンは、サイモンが頭痛持ちであることをFBI捜査官から聞いており、船ごと爆破して勝手に乗り込んできたマクレーン達を始末できるのであれば、サイモンは弟の敵討ちも同時にできるため、内心笑いが止まらなかったことでしょう。
そのため、捕らえられて拘束されアスピリンなど飲めるはずもないのに、すぐに船ごと爆破して殺されるのに、
「ほらよ、飲めるものなら飲んでみな」
みたいなノリで、マクレーンにアスピリンを放り投げたのでしょう。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
アスピリンの容器底に場所が特定される文字
船が爆破される寸前になんとか脱出できたマクレーンは、相棒のゼウスに促されて絶縁状態の奥さんに公衆電話で連絡を取るときに、サイモンから貰ったアスピリンを飲むのですが、容器の底にヒントになる座標が記されていることで、犯人グループのアジトが特定されることとなりました。
カナダ国境の北に潜伏
アスピリンの容器底には、「NORD DES LIGNES」「93S104」と記されており、ドアップにした静止画で強調されています。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
フランス語で「NORD DES LIGNES」、英語では「NORTH OF THE LINES」となり、直訳すると「線の北」⇒「カナダとの国境の北」ということになり、「93S104」は、座標のこと。
つまり、字幕版の標記で「国境の北 “93S104″」の付近が、犯人グループのアジトではないかと考えられ、歴史上フランスからカナダへ移民している関係で、カナダのケベック州はフランス語を公用語としており、フランス語で記されていたということになります。
大きなネオンサインには、「Nord des Lignes」「LA GRANDE STOP DU QUEBEC」とあり、「ケベックの大きな停留所」という意味で、広大な敷地があり、そこを隠れ蓑にしていたようです。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
結論としては、容器底の座標に記されていた薬局で、アスピリンをサイモンが購入していたため、アジトが見つかってしまったというのがオチでした。
ちなみに、大きなネオンサインがラストのクライマックスシーンで常に映し出されていたため、ラブホテル?モーテル?が近くにあったと思ってしまいそうですが、大きな停留所として使われている場所をアジトとして使っていた設定のようです。
場所をわかりやすく表現するための、ネオンサインなのかもしれません。
したがって、アスピリンは市販品ではなく薬局で購入したものですが、薬局名やラブホテル名が、アスピリンの容器にに書かれていたわけではありません。
ダイハード3 「6991」で偽物とわかったのか?見抜き方は?
同僚刑事の警察バッジナンバー「6991」を覚えていたから、犯人グループの一味と見破ったのですが、それに気が付くまでの描写や英語表現の違和感があったのをお気づきになりましたか?
ここでは、マクレーン刑事が不信感を抱くきっかけとなった英語表現についても紹介します。
同僚刑事の警察バッジナンバー「6991」を覚えていたから
冒頭で伏線として、マクレーンがサイモンから指定された場所に向かう警察車両内で、同僚のリッキーにくじの当選番号を訊いたとき、リッキーは自分の警察バッジナンバー「6991」を、毎週買っていることを知っていました。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
マクレーン刑事は、連邦準備銀行に大掛かりな強盗・強奪をされたと勘づき到着すると、地下金庫へのエレベータがある出入口で、職員や警官になりすまし見張っていた犯人グループに連れられエレベータに乗り込みます。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
一緒に乗り込んだ警官が胸に着けているバッジが、「6991」であったため、同僚のリッキーのバッジだと気が付いたのです。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
リッキーが殺されて、身の危険が迫っていることをすぐさま察知し、得意げに話して油断をさせて、銃で撃ち殺し難を逃れました。
大雨を表現する慣用句「raining cats and dogs」
大雨を表現する慣用句で「raining cats and dogs」がありますが、イギリス英語とアメリカ英語の両方で使用されています。
言葉には一般的な順番があり、日本語では「猫犬」ではなく「犬猫」の方がしっくりくるように、英語では、「cats and dogs」という表現が一般的です。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
この「cats and dogs」の順番が、エレベーターにマクレーン刑事を誘導する偽警備員は、「dogs and cats」と言っており、マクレーンは内心、
『ん!?普通「cats and dogs」だろ?「dogs and cats」?』
と思ったのではないかと推測され、不審に思うきっかけになったのではないでしょうか。
エレベーターとリフトの英語表現で不信感を抱く
また、エレベーターにマクレーン刑事が乗り込む際に、偽警備員がエレベーターのことをリフトと言ったことにも違和感を覚えて、怪しさが増したと思われます。
引用元:ダイ・ハード3 (With a Vengeance)
エレベーターのことをアメリカ英語では「 elevator」、イギリス英語では「lift」と表現し、アメリカ英語で「lift」はスキー場などのリフトのことを指します。
犯人グループはアメリカ人ではなくヨーロッパ人との予測を、FBIから聞いていたため、不審に思い周囲を見渡し、偽警官のバッジに気が付いたということでしょう。
このシーンにおいても、伏線回収はわかりやすく演出されていましたが、英語を話せない日本人にはわかりにくいところです。
まとめ
最後にまとめると、
- 犯人のリーダー「サイモン」とマクレーン刑事は頭痛持ちであり、二人とも幾度となくそのシーンを強調し、サイモンがマクレーンを捕らえて爆死させる直前に、その場のノリで彼にアジトがバレるアスピリン容器を渡したことで、サイモンは墓穴を掘った。
- 同僚のリッキーがくじの当選番号を自分の警察バッジナンバーで毎週購入していると、冒頭でマクレーン刑事が登場するシーンでさりげなく言っており、そのことを覚えていたため、犯人グループの一味と見破り危機を脱した。
といったところでしょうか。
今から25年以上前の1995年の作品ということで、現代の作品と比較するとCGや合成が甘いシーンがいくつかあり、現代の基準で観ると画的にはやや残念に思うところはあります。
例えば、トンネルの中で爆破されて、マクレーンに多量の水が押し迫ってくるシーンや、犯人グループの船に飛び移ったり、その船が爆破されたシーンは、明らかに色合いが異なり合成感丸出しで、当時の技術ではこれが限界だったのかと思わされました。
ただ、ハリウッド作品らしくド派手なアクション映画である一方で、サスペンススリラー要素もあり、伏線回収もわかりやすく、クイズ(なぞなぞ)もあることから、2回以上観直しても楽しめる作品だと思います。