近年、救急車をタクシー代わりに呼ぶ人が増えていて社会問題になっており、緊急性がないケースや非常識な患者(モンスターペイシェント)も増加傾向にあるようです。
タクシードライバーをしていると、「このケースではタクシーではなく救急車を呼んでほしい」といった事例もあります。
また、軽症ならば、帰りの交通費が安く済むタクシーの利用をおすすめします。
そこで今回は、「急病やケガの際に、タクシーと救急車のどちらを呼ぶべきか?」このテーマについて、運転手の目線から考えます。
この記事に書いてあること
✅急病やケガの際に、「タクシーと救急車のどちらを呼ぶのか?」。迷ったときのひとつの目安として、「自力でタクシーに乗車できるか」が、運転手の目線で言えば最も大切。
✅陣痛で救急車やタクシーを呼ぶときは、かかりつけ医に相談してから。
✅帰りの交通費を考慮すると、軽症ならばタクシーの方が安く済むこともあります。
タクシーにお客様自身が自力で乗車できない
タクシーを呼んでいただいても、そのお客様自身が自力で乗車することができなければ、ドライバーはどうすることもできません。私が遭遇した2つの事例を紹介します。
出血を伴うケガをして乗車することができない
このケースは、私がタクシードライバーになってまだ1~2か月程度の頃に、無線配車であるお宅にお迎えに行ったときのことです。
ケガをして出血は止まっているものの、自力で乗車することが困難を極め、20分程時間をかけて自力で乗車していただき、すぐ近くの外科・整形外科の個人開業医の病院まで送迎したのですが、当然ながら自力で降車ができません。
こうなることは予測できるので、乗車される前に救急車を呼んで下さいと何度も言いましたが、「近所の目がある、知られたくないから嫌だ!」と頑なに拒否されました。
その病院はリハビリ施設が充実しており、専門のリハビリスタッフが複数常駐しているので、その方達2~3名に半ば無理やり引きずり出してもらう形で降車していただきました。
そして、出血は止まっていたものの車内には血痕がつき、シーツを取り変え全面清掃を余儀なくされたのです。
車内を著しく汚されるのが予見できる場合は、乗車拒否が可能なので、そう言って乗車拒否すればよかったのですが、ドライバーになりたての頃でその判断ができませんでした。
路上でお年寄りが急に立ったまま動けなくなった
日中、腰が悪い老婆が、路上をシルバーカーを押して歩いていると、急にそのまま動けなくなり、通りかかった高校生に助けを求めてタクシー会社に電話をして、無線配車でお迎えに行きました。
シルバーカーを持ったまま「全く動けない、病院に連れてって」と言うので、
私は「自力でタクシーに乗れますか?乗れないのであれば、救急車を呼んでいただくほかありません。運転手はお客様に指一本触れることができません。触れれば暴力行為になります」と言うと、
自力で乗ることができないと老婆は言うので、そばにいたその高校生に救急車を呼んでもらい、あとはその高校生に任せて立ち去りました。
お客様に触れることは暴力行為
言うまでもありませんが、タクシードライバーがお客様に指一本でも触れれば暴力行為に該当します。
自力で乗車されることが困難なときは、ドライバーが手を貸すことなどできません。
仮に手を貸して、あとから、あのとき運転手に手を引っ張られたから骨が折れたなどと言われたら、大問題になりこちらが責任を取らされます。暴力行為として犯罪になりかねません。
陣痛でタクシーと救急車のどちらを呼ぶべきか?
陣痛に関しては、まずかかりつけ医に相談して適切なアドバイスをしてもらうのがまず先決でしょう。周囲の人が尋常ではないと判断すれば、救急車を呼ぶことも必要になってきます。
陣痛のときのタクシー利用
陣痛でかかりつけ医に出向きたいときに、周囲にクルマで送ってもらう人がいなければ、救急車を呼ぶ程ではない場合、タクシーの利用をおすすめします。
陣痛タクシー(マタニティー/子育てタクシー)
近年では「陣痛タクシー」(マタニティータクシー/子育てタクシー)といって、予めかかりつけ医や出産予定日をタクシー会社へ登録をして、いざというときスムーズに配車してもらえるサービスを提供しているタクシー会社もあります。
名称は会社によって様々ですが、ドライバーへ登録された情報が知らされるので、行先を説明することなくすぐに出発できます。
ただ、地方ではそのようなサービスを行っているタクシー会社は少ないので、通常のご利用で呼んでいただいて構いません。
電話した際にオペレーターに、状況や行先を告げていただければ、その情報をドライバーが配車指示とともに受けて、スムーズに出発することができます。
帰りのタクシー代は自費
自力でタクシーに乗車できる「軽症」であれば、入院することもなく帰宅することになりますが、当然ながら帰りの交通費は自費です。
タクシーで近くのかかりつけの病院に行けば一定の金額で済みますが、救急車の場合は、症状にもよりますし本人の希望も考慮されるとはいえ、どこの病院に運び込まれるかわかりません。
自宅から遠方の病院へ運び込まれた場合、帰りの交通費も高額になります。
タクシードライバーをしていると、特に深夜に身内や友人に迎えに来てもらうことができずに、病院からタクシーを呼ばれる方が時々みえます。
ドライバーからすれば「おいしいお客様」ですが、そのお客様同士の会話を聞いていると、「救急車を呼ぶほどではなかったんじゃないの?」と思うこともあります。
救急で運ばれて、帰りタクシーを呼ばれて自宅へお送りしたお客様が何度もみえましたが、夜中に結構な距離を走ったこともありました。
気が動転しているのもわかりますが、冷静な判断をしないと、無駄な費用が掛かります。
まとめ
急病やケガの際に、タクシーと救急車のどちらを呼ぶか迷われたときは、運転手目線から言わせていただくと、「自力でタクシーに乗車できるか」この一点です。手を貸すことなど一切できません。
もちろん、緊急性を要する場合は救急車を呼ぶのが当然ですが、そこまで緊急性はないものの、どちらを呼ぶべきかわからない場合のひとつの目安として参考にしていただければ、よろしいかと思います。
また、タクシーを呼ばれる場合は、行先の病院に予め問い合わせをして診察可能か確認後、呼んでいただけるとスムーズに病院へ送り届けることができます。
「タクシーと救急車」、症状に応じて適切にご利用いただく手助けになれば幸いです。
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