タクシードライバーは、出社して退社するまでどのような一日を過ごして仕事をしているのでしょうか?未経験者にはよくわからないのではないでしょうか?そこで今回は、「タクシードライバーの一日のスケジュール | 仕事の流れを解説」と題してまとめてみました。
この記事に書いてあること
出社 ⇒ アルコールチェック ⇒ 点呼 ⇒ 経営者の理念などの唱和 ⇒ 始業前点検 ⇒ 出庫 ⇒ 営業
⇒ 帰庫 ⇒ アルコールチェック ⇒ 納金・運転日報の提出 ⇒ 洗車・清掃 ⇒ 退社
この一連の流れを詳しく解説します。
タクシーの出庫
タクシードライバーは、出庫するまで何かとやることがあり、出社してすぐに仕事に出ていくことができません。個人差はありますが、15分~30分くらいかかります。出庫するまで一体何をするのかをご紹介します。
※出庫とは…一般的にはクルマを車庫から出すことですが、タクシー業界の場合、会社(営業所)をタクシー車両で出発し、営業を開始することをいいます。
アルコールチェック
事業用自動車の運転者の飲酒運転を根絶するため、平成23年5月1日より、アルコール検知器を使用すること等が義務化されたのを受けて、まず会社に設置されている業務用のアルコール検知器(アルコールチェッカー)で、アルコールチェックをしなければなりません。
ストローを機械に差し込み、息を数秒間吹きかけますが、数値が0mgでないと仕事ができません。検知器により異なりますが、記録紙で印字されてそれを日報に貼り付ける会社もあれば、正常値(0mg)なら日報に記録のみをする会社もあります。
アルコール検知器により、結果を通知する方法(自動音声等)は異なりますが、「3段階」の振り分けになるようです。今回は自動音声で説明します。
(1)「運転しても大丈夫です」・・・・・・・・・・・0mg
(2)「もう少し経ってから、チェックして下さい」・・微量
(3)「絶対に運転してはいけません」・・・・・・・・かなり多め
前日のアルコールが残っている場合、(2),(3)になります。
(3)の場合は論外ですが、(2)の場合は、うがいをするなどして時間をおいて再びチェックして、それでも正常値にならない場合は強制的に帰宅させられます。
ただ、この検知器は「臭い」に反応するため、香料の強い飲食物等を直前に摂取すると、引っかかることがあります。
例えば、ガムや飴、清涼飲料水や、のどスプレー・口臭予防のため口に含むもの等で反応する場合があるので、出庫直前には口にしない方が無難です。
点呼と検温
まず、身だしなみを整えます。会社により異なりますが、点呼には「集合点呼」と「個別点呼」があります。この際、経営者の理念や接客用語、安全宣言の唱和を行います。
コロナ禍において、点呼と同時に非接触で検温を実施するタクシー会社も増えています。
集合点呼
定めれらた時刻に複数の人員で点呼を受けます。いわゆる「始業前のミーティング」のようなもので、連絡事項や事故・違反・トラブル等の連絡などが伝達されます。『集合点呼』は行われないタクシー会社もあります。
個別点呼
アルコールチェックの結果や健康状態を報告し、免許証の提示や日報を提出します。担当者から日報に印鑑の捺印等のチェックをしてもらい受け取ります。
経営者の理念・接客用語・安全宣言の唱和
会社により内容は異なりますが、『経営者の理念・接客用語・安全宣言』の唱和を行います。
〇経営者の理念:「お客様第一」「信頼がモットー」等
〇接客用語 :「ご乗車いただきありがとうございます」「どちらまで行きますか?」等
〇安全宣言 :「スピードは控えめに」「バック時は直接目視でしっかり確認する」等
どうしても、念仏みたいにボソボソと言ってしまいがちになるので、特に新人のうちは、なるべく大声でハキハキと言うと周囲からの評判もよくなります。
始業前点検・清掃・準備
始業前点検
配車されたタクシー車両の始業前点検を行います。自家用車と違い、タクシー車両はほぼ毎日走行しています。総走行距離が30万キロメートルを超えている車両もザラにありますから、何か車両上のトラブルが起きることも考えられます。
ボンネットを開けて、オイルや冷却水、バッテリー液の量、エンジンのかかり具合、異音が出ていないか、また、タイヤの溝および空気圧、異常ランプの点灯の有無など、始業前点検(日常点検)はしっかり行います。
もし、車両に異常が見つかれば、管理責任者に連絡し修理を依頼します。その場合は、別の空き車両をあてがってもらい、再度点検をします。
特にオイルは、車両が古くなると走行距離に比例して劣化するのも早く、漏れていなくとも目減りしていきますから要注意です。減っていれば継ぎ足します。
「クルマにキズがないか」もしっかりチェックします。例えば、車両のキズのチェックを怠ったため、出庫後にキズがあることに気が付いて、自身に身に覚えがなくとも責任を取らされる場合もあります。
車体・車内の清掃
車体・車内の清掃は、帰庫(勤務終了)時も行いますが、出庫前にもチェックしておくことが大切です。
車体…帰庫時に洗車をしている(のが前提)とはいえ、前日の天候により雨がしけて汚れていたり、花粉や黄砂が被っているなどよくあることです。汚い車両では仕事ができませんので、目立つ汚れは取り除きます。
車内…毎回同じ車両であてがわれない場合、前日乗ったドライバーの清掃の仕方に個人差があるため、チェックは必ず必要です。汚い車内では仕事ができませんので、必要に応じて清掃します。
必需品等の私物を準備
別記事で紹介した「必需品」等の私物を車内に準備・セッティングします。
同僚とのコミュニケーション
出庫前に、同僚・先輩ドライバーとコミュニケーションを図り、情報収集を行います。
出庫
出庫して、ここからが仕事のスタートです。売上を上げるのももちろん大事ですが、まずは安全運転を心掛けて、事故なくお客さんとトラブルがないようにすることが大前提です。
営業
待機場所での着け待ち・無線配車・流し営業等で、お客さんを乗せて仕事をします。
休憩
長時間勤務になるため、休憩は自己判断で適度に取ります。営収を上げるために、休憩も取らず”走り詰め”では事故を起こしかねません。「休憩を取るのも仕事のひとつ」と考え、安全運転に努めることが肝要です。
タクシーの帰庫
一日の営業を終えて会社に帰庫してから退社するまで、結構することがあります。売上金の納金や洗車など、30分程度はかかります。
アルコールチェック
帰庫後も、出庫前と同様にアルコールチェックを行います。
納金・運転日報の提出
納金
その日一日の売上金を、営業所内の「専用の納金機」に入れて納金します。未収分以外の現金徴収分を納金します。
運転日報の提出
乗務日の「報告書(運転日報)」を記録して提出し、1年間会社が保存することを法律で義務付けています。乗車時刻・乗車場所~降車場所・人数・休憩時間とその場所・走行距離など多岐にわたり記録しなければなりません。
また、「運行記録計(速度・距離・時間などを時間軸で記録)」おいても同様に、提出しなければなりません。
自動日報
今では多くのタクシー会社が「自動日報」を採用していますので、逐一手書きで記録する必要はありません。タクシーメーター内に、各ドライバー所有の専用カードが差し込めるようになっており、それを差し込んで出庫し業務を終えて帰庫後、書込みボタンを押して、営業所の端末に差し込むと、運転日報と運行記録計が記録された用紙がプリントアウトされます。
料金も自動計算されますので、それに沿って売上金を納金機に納金する仕組みです。
ただ、例えば未収分(お客さんからチケット払いされた)のとき、誤って現金支払い処理をメーター内でしてしまったときには、現金の納金金額が変わってしまうので、電卓で計算し直して手書きで修正しなければなりません。
間違えると、ひと手間かけなければならなくなるので、各ドライバーは注意して処理をしています。
また「運行記録計」についても同時にプリントアウトされます。
例えば一般道で、時速70kmを超えていると会社から注意を受けたり、大幅な速度超過の場合は、罰金が科せられるなどの懲罰処分を受けることもあります。(会社により異なります)
手書き日報
小規模のタクシー会社などでは、今でも「手書き日報」の場合もあります。上記の「自動日報」の項目を、逐一手書きで書かなければなりませんので、乗車区間・料金・現金orチケット等の項目を、お客さんが降車後に書き留めなければなりません。それを元に計算して納金します。
洗車・清掃
基本的に、車両はドライバーが乗務後に洗車して、車体・車内を清掃しなければなりません。車両は共有しますので、次に乗るドライバーのために洗車・清掃を行います。
自動洗車(洗車機)
タクシー会社により異なりますが、洗車機をかけてもOKな会社もあれば、そうでない会社もあります。また、車両の中でもハイヤーとして使用される上級仕様車は洗車機NGにしているとか、会社により取り決めがあります。
自社の営業所に洗車機(ガソリンスタンドにあるものと同様)が設置されているところもありますし、会社が提携するガソリンスタンドの洗車機を、割安で利用できる会社もあります。
ただ、自社に洗車機が設置されておらず洗車機をかけてもOKな会社でも、自腹を切って近くのガソリンスタンド等で洗車機を掛ける場合、新人の頃はやめておいた方がいいかもしれません。
周囲から「新人のくせに横着して洗車機をかけている」と思われてしまい評判を落としかねません。
手洗い洗車
大抵のタクシー会社には、洗車が可能なスペースが設けられていますので、そこで洗車を行います。混み合うこともありますので、拭き取りや車内清掃は、別のスペースや車庫に移動させるなど臨機応変に対応しましょう。
建前上は、毎回乗務後に洗車をすることが前提ですが、実際は、その日雨が降らずに埃や花粉が載っている程度であまり汚れていなければ、濡れたタオルで拭き取りだけで済ませているドライバーもいます。要は、見た目がキレイであればOKです。
車内清掃
マット洗浄
マット洗浄機(ガソリンスタンドやコイン洗車場に設置されているものと同様)が、大抵の会社にはあると思いますので、それに通してマットを洗浄します。
車内清掃
特に後席左側は、ドアを開けてお客さんが乗り込まれるので最も汚れやすい箇所です。後席を重点的にチェックして、前席の清掃もしっかり行います。運転席の足元も、乗り降りを頻繁にするため土や砂などがたまりやすいです。
ダッシュボード上も、エアコンや空気清浄機を常に回していると、一日乗務が終わると結構な埃が載っていますので、小型のハンドモップやタオルで拭き取ります。
ガラスの拭き取り(内側)
内側のガラスの汚れに注意を払います。素手でガラスを触られて指紋がついていることが多々あります。特に小さいお子さんが乗られた後や夜の酔っ払い客の乗車後は、指紋がついていることがしばしばあります。
タクシー専門の洗車業者に依頼する
都市部では、利用者が多い故タクシー車両も多く、「タクシー専門の洗車業者」があり深夜も営業していて、数百円~2,000円程度で専門のスタッフがしてくれます。
都市部・地方を問わずガソリンスタンドでも洗車をしてくれるところも多いですし、疲れているときや売上が多く上がったときなどに、依頼するのもひとつの方法です。
退社
これらの作業が終わって、退社し帰宅します。隔日勤務や午後から翌朝までの勤務などは、明け日は「明番(あけばん)・非番」などと呼ばれ、その日はお休みになります。
勤務時間が長い会社が多いので、どうしても疲れは溜まっていきます。次の勤務に備えて、ゆっくり休んで睡眠時間をしっかり確保することをおすすめします。事故を起こしては元も子もありませんので、帰宅後はしっかり休みを取りましょう。
まとめ
出社後から退社するまでの一連の流れをおさらいすると…、
出社 ⇒ アルコールチェック ⇒ 点呼 ⇒ 経営者の理念などの唱和 ⇒ 始業前点検 ⇒ 出庫 ⇒ 営業
⇒ 帰庫 ⇒ アルコールチェック ⇒ 納金・運転日報の提出 ⇒ 洗車・清掃 ⇒ 退社
勤務体系や出勤・退社時間などタクシー会社により異なりますが、「タクシードライバーの一日」は概ねこのような仕事の流れになります。
また、一日の勤務時間は明確に定められていますので、それをオーバーすることはできません。事故やトラブル、遠距離の客を乗せて帰れないなど、やむを得ないケースもありますが、所定の時間までに帰庫しなければなりません。
今回は、タクシードライバーが出社してから退社するまで、一日のスケジュールを詳しくまとめてみました。「お客さんを乗せて目的地へお送りして、運賃をいただく」というメインの仕事以外にもすることがたくさんあります。
特に新人の頃は、右も左もわからず、ヘトヘトになって帰ってきてからの洗車・清掃はキツイものがありますが、慣れてくれば要領がわかってくるので、洗車でも納金でもテキパキとできるようになります。
あなたも、タクシードライバー目指してみませんか?
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