映画「沈黙のパレード」で、時折黄色の蝶(モンシロチョウ)が出現するシーンがありました。
そんな都合よく現れるはずもなく、CG処理をしているのは明らかですが、何を意図しているのでしょうか?
また、蝶の形をした金色のバレッタが意味するものとは?
そこで今回は、蝶やバレッタについて考察とSNSでの感想を交えながら紹介していきます。
沈黙のパレード・蝶々は誰を表す?
原作にはありませんが、映画版では、所々に黄色の蝶が出現し、何かを表現しているようにみえます。
現代のCG技術で、違和感なく自然に溶け込んでいますが、
- 制作側は何を表現したかったのか?
- どのシーンで何回出てきたのか?
この2点について掘り下げていきます。
制作側は何を表現したかったのか?
映画版では、冒頭沙織が髪留めとして使っていたバレッタは、金色の蝶の形をしたもので、彼女の後頭部を明らかにわかりやすく映しており、沙織が蝶であることを伏線として張っていることがわかります。
引用元:映画「沈黙のパレード」
原作では「蝶の形をした金色のバレッタ」ということで、小説なので各個人で脳内イメージに差は出ると思いますが、映像化するにあたり、蝶を「沙織(の象徴)」と見立てて、要所要所のシーンで蝶のCGを挿入して、彼女の気持ちを表しているのではないでしょうか。
どのシーンで何回出てきたのか?⇒5回
結論から言うと、黄色の蝶は5回出てくることになります。
各シーンでクローズアップして紹介していきましょう。
沙織が新倉家の屋敷で歌っているとき
まず、冒頭で新倉家に並木親子・戸島・高垣・宮沢を呼んで、沙織がピアノに合わせて歌っているシーンで、黄色の蝶が楽しそうな感じで飛んでいるのがわかります。
室内からの撮影時にも、蝶が確認できます。
引用元:映画「沈黙のパレード」
最初からCGの蝶を入れるつもりでカメラターンしていますが、ここでは沙織の生まれ変わりではなく、彼女の気持ちを表して、伏線を張っていると思われます。
沙織の葬儀
CGではないですが沙織の葬儀のシーンで、生前の写真をテレビモニターに連続して映し出しているときの左右の「枠」に花の絵柄があって、モニターの右上に黄色の蝶が花の蜜を吸っている絵が描かれています。
引用元:映画「沈黙のパレード」
芸が細かいですが、沙織を蝶に見立てていることがわかりますね。
留美が沙織に嫉妬しているとき
新倉家の庭で、留美と沙織が話したあと、留美が一人で庭に残ったとき、黄色の蝶が彼女の周りを飛び、手で振り払う仕草をしたシーン。
引用元:映画「沈黙のパレード」
留美が沙織の才能に嫉妬しているときに、蝶を振り払うことは、留美は無意識に、あるいは意識して彼女に嫉妬していたことを表現したかったのではないでしょうか。
個人的には、蛾なら別ですが、キレイな蝶が自分の周りに飛んできて、手で振り払うことはしない人の方が多いと思います。
沈黙のパレードで良かったのは蝶の使い方だよね
手で払う人と見て悲しむ人。
感情を若干濁した作りではあったけどあのシーンだけではっきりとサインを出してる。
快く思っていなかったと明確に表してるのは凄く良かった。
アレは映像ならではの演出だし。— 綾辻安吾⊿シャドウ400クラシック (@DeteCtivE_Ungo) September 16, 2022
留美の自宅で窓越しに飛んでいる
湯川が留美の自宅を訪れ、彼女が紅茶を再び淹れるとき、窓越しに外を見ると、蝶が元気に飛び回っているのが確認できます。
引用元:映画「沈黙のパレード」
沙織が「自分のことは気にしないで」と元気づけるような心境を表現しているのかもしれません。
沙織の墓参りをする高垣の肩に止まる
沙織の墓前で墓参りをする夏美と高垣のシーンで、高垣が手を合わせているときに、彼の肩に黄色の蝶が止まり、夏美が驚きつつ泣きそうな笑顔を見せるのが印象的でした。
最後このシーンにおいても、沙織を蝶に置換えて、彼女の生まれ変わりを表現し、高垣のことが好きだったことを特に印象付けています。
引用元:映画「沈黙のパレード」
墓参りのシーンに切り替わった時、高垣のブルーデニムのジャケットに何となく違和感を抱いたのですが、黄色の蝶が映えるように、あの衣装にしたのでしょうか。
沈黙のパレード見てきました。
東野圭吾の味が出た悲しいお話。みんないい演技でしたが北村さんは流石でした。最後の蝶が肩にとまるシーンとエンドロールの回想で涙。やっぱガリレオは良い。— アッシュ (@sat_ash) September 23, 2022
この5つのシーンにおいて、蝶を沙織に例えることで、その登場人物と沙織の感情を、映像で表現していると考えられます。
あと、映画館で観られた方で、戒名にも「蝶」の文字が使われていたと言ってみえる人もいますが、字が小さくて管理人にはよくわかりませんでした。
最後の「信女」は確認できますが、字体から推測すると、2番目の字が「蝶」なのかもしれません。
引用元:映画「沈黙のパレード」
沈黙のパレード感想
・あの店の料理が美味しそうで食べたい。生ホヤの天ぷら付きって!!!美味そう。湯川先生が食べれそうで食べれないの笑う。具材何だったのかなあれ、食べたい
・草薙さんの胃が心配。頼むから胃薬と、事件の確固たる証拠と、休暇をあげてほしい。
・蝶々。戒名にも蝶ついてたね…— 夜凪 (@yonagiwafu) October 30, 2022
沈黙のパレード・バレッタが最後に意味するもの
留美が沙織と口論となり、彼女を突き飛ばしたあと、現場に戻り落ちていたバレッタを大切に保管していたことで、致命傷を負わせたのは蓮沼であることが濃厚となり、事件は終結しました。
このバレッタにおいても、冒頭から明らかな伏線が張られており、上記のように最後に回収しています。
この作品におけるバレッタが意味するものを掘り下げていきます。
沙織の後頭部に金色のバレッタで伏線を張る
冒頭、沙織の後頭部につけられた金色の蝶の形をしたバレッタを映したシーンで、沙織はそれを着けてますと、沙織が生きていたときのパレードの日、高垣と一緒にいるシーンで、彼からプレゼントされたものであると、明確に映像化しています。
引用元:映画「沈黙のパレード」
初見では分かりづらいですが、伏線を張り、最後でこのバレッタに留美が突き飛ばした際に血痕が付着していなかったことで、蓮沼が致命傷を与えたことが濃厚になるという伏線回収で、エンディングとなります。
この作品において重要なアイテムであり、エンディングロールになる直前、捜査本部の机の上に沙織のバレッタを置いているシーンを入れることで、「蝶は沙織」であることを、最後にあらためて印象付ける演出となっています。
引用元:映画「沈黙のパレード」
数々の東野圭吾氏の小説を映画化してきた西谷監督らしい、原作を大きく崩さない伏線回収だと思います。
黄色の蝶&バレッタは沙織を表している
上記で述べたように、「沙織=蝶=バレッタ」という構図で、現在はCGの技術も進歩し、あまり違和感なく溶け込ませることができ、制作側の意図が感じられる作品に仕上げていることがわかります。
蝶の演出について、SNSをチェックしてみます。
試験終わって、気晴らしにいい映画を観たいと思い、沈黙のパレード観てきました✨
小説で読んだ時も辛くて切ない物語と感じたけれど、映像になり、北村一輝さんのあの憔悴し切ったお姿により一層身につまされる思いになり、蝶の演出もぐっとくるものがあって、とても心が震える映画でした…よかった… pic.twitter.com/BIDFNId6BR
— 優流-Uru- (@oo0Uru4180oo) September 25, 2022
沈黙のパレード見てきました。蝶の演出がとても良かった。
— 三羽政行@新人💊 (@h11y14) October 1, 2022
沈黙のパレード、蝶の演出がお洒落だった、内容は東野圭吾らしいストーリー
— 令和 (@comic_lovin) September 17, 2022
沈黙のパレード、蝶のバレッタというアイテムを心情表現のモチーフに見事に昇華して画として語っているものがあるの、西谷弘の小説原作映画の巧さが冴え渡りまくってて心底痺れますよ
— 長谷川さより (@on_a_wet_night) September 16, 2022
まとめ
最後にまとめると、
- 「黄色の蝶(モンシロチョウ)」や「蝶のバレッタ」は、沙織を表現していて、冒頭からエンディングにおいて、伏線回収している。
- 原作には登場しない映画版での「黄色の蝶」は、制作側が脚本や演出なども含めて、わかりやすく映像化して、沙織の感情を表現している。
といったところでしょうか。
ガリレオドラマシリーズはもちろん、マスカレードホテル・ナイトなど、原作を崩さず明確に伏線回収する映像を造り上げる脚本や演出は、とても良かったのではないでしょうか?