タクシーは、お客様の乗車の有無を問わず、走行中に急停止することがよくあります。
一般車やタクシー以外の車両を運転されている方で、タクシーの後続を走行中に、急停止されたり挙動不審な動きをされた経験がある方も多いのではないでしょうか?
運転手は、職務上様々な理由により急ブレーキを踏んで停止したり、急減速をすることがあり、追突事故が起きることもあります。
運転手の立場としては、急減速・急停止せざるを得ないこともあるのですが、その際に一般車がタクシーに追突事故をしてしまったときの諸問題と、タクシー乗車中の乗客が、急ブレーキによる車内事故や追突事故に遭われたケースを取り上げます。
私はタクシー会社の事故対応の実務者でもなく、まして交通事故対応専門の弁護士でもありません。あくまでも運転手の立場として、自身の事故の経験も含めてまとめています。
この記事に書いてあること
✅タクシーの急ブレーキや急停止が原因の追突事故の責任は?
✅怪我やむちうちの医療費は誰に請求するか?
について、順序立てて解説しています。
タクシーの急ブレーキや急停止が原因の追突事故の責任は?
タクシーは実車・空車を問わず、急減速や急停止する可能性が一般車よりも高いのは事実です。
代表的な例で言うと、空車走行中に、手を挙げてタクシーを捕まえようとしている人がいて、それに気づいて急減速や急停止して、後続車が追突してしまった…。
こういったケースでは、タクシーに過失はないのでしょうか?
タクシーに追突した過失の割合
タクシーが急停止したことで追突事故が起きた場合、タクシー運転手にも過失があると考えられます。
当然ですが、道路交通法上、タクシーやバスも一般車と同様の扱いであり、大目に見てもらえるとか緩やかに適用されることなどありえません。
道路交通法第24条で、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、急停止または速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならないと定めています。
よって、法的には危険を回避するためではなく、タクシーがお客を拾うことにより急停止し追突したのですから、タクシーにも過失はあると考えられます。
その道路の制限速度や双方の速度、車間距離・道路状況・駐停車禁止場所か・スマホの操作や電話をしていたかなど様々な状況を判断して、過失の割合が決まります。
駐停車禁止場所のチェック
一般車を運転されている方も、第一種運転免許を取得しているのですから、「駐停車禁止場所」は把握されているはずです。
タクシー運転手が乗客を乗降させる際に気を付けていることは、そこが安全に乗降することができるかということと、駐停車禁止場所ではないかということです。
駐停車禁止場所でタクシーが急停止して追突した場合は、その旨主張するべきです。もちろん、警察の事故処理班も気付くでしょうが、過失の割合も変わってくると考えられます。
タクシー乗車中の怪我やむちうちの医療費は誰に請求する?
では、タクシーに乗客として乗車中に、急ブレーキを踏まれて車内事故や後続車に追突された場合はどうなるのでしょうか?
タクシー乗車中に車内事故になった場合
当然ですが急ブレーキを踏んで、車内で怪我などを乗客がすぐに訴え出た場合、警察に事故処理をしていただき、運転手は所属する会社に連絡して、救急車を呼ぶなど必要に応じた処置を取ります。
また、そのときは救急車等を呼ばなくとも、あとからそれが原因で病院に行くことにするのであれば、タクシー会社に、病院に行く前にその経緯や事情を説明し、一報を入れて下さい。
例えば、タクシーに乗車中何か危険なことがあり急ブレーキを踏んだ、またはガードレールにぶつけて物損事故を起こしたなど、車内にある程度の衝撃があったときに、そのときは大丈夫でも、あとからそれが原因のむちうちなどの症状が出てきて病院に行く場合は、病院に行く前にその旨を会社に一報を入れて下さいと、常識的な運転手であればそのときに言うはずです。
病院へ行って治療費等の請求をするのであれば、タクシー会社(保険会社やタクシー共済など)と交渉することになりますが、すぐに病院へ行けば治療費は支払ってもらえるかもしれませんが、1週間後に病院へ行って請求しても、その因果関係が証明できないこともあるかもしれません。
タクシー乗車中に追突事故にあった場合
上記の車内事故と同様に、警察に事故処理をしていただき、運転手は所属する会社に連絡して、救急車を呼ぶなど必要に応じた処置を取ります。
損害賠償を求める際は、運転手に過失があるかによって変わってきますが、タクシー会社(保険会社やタクシー共済など)や追突事故を起こした相手先との示談交渉になります。
過失が大きい側の任意保険会社が、まとめて交渉窓口となることもあります。
いづれにしても不明な点がある場合は、交通事故専門の弁護士に相談されるのが最善の対処方法だと思います。
最近は自家用車の任意保険で「弁護士特約」というものがあります。
私も自家用車の任意保険でこの特約を付けているのですが、弁護士に示談交渉を実質的に無料で依頼できます。
タクシーやその乗客が絡む事故のケースでは、一般的に追突した側が不利益になったり、示談交渉がややこしくなるといったことを耳にします。
ですので、このようなケースでは任意保険の「弁護士特約」が威力を発揮するかもしれません。
急ブレーキは危険を回避するためか?運転手の業務上の過失によるものか?
タクシーは急ブレーキを踏む際に、2つのパターンがあります。以下それぞれ説明します。
危険を回避するため
上記にも述べたように、タクシー・一般車問わず、危険を回避するためにやむを得ず急ブレーキを踏むのは致し方ありません。道路交通法でも認められています。
運転手の業務上の過失
危険を回避するためではなく、運転手の業務上の過失により急ブレーキを踏むこともあります。
例えば、集中力を欠きボーッとしていて交差点を右左折するところで、行き過ぎてしまい慌ててブレーキを踏んだり、高速道路の料金所でETCカードの差し込みを入れ忘れて、急ブレーキを踏んだなど、明らかに運転手に過失のあるケースもあります。
急ブレーキは危険を回避するためか?業務上の過失によるものか?で過失の割合も変わってきます。タクシーには防犯のための車内カメラが搭載されていることも多いので、業務上の過失によるものであれば、主張はすべきです。
後部座席のシートベルトの着用の有無
タクシー乗車中の車内事故に関しては、後部座席のシートベルトの着用の有無が争点になります。
ご存知のように、後部座席もシートベルト着用は同乗者の義務です。2008年6月1日から後部座席も着用義務が課せられ、もう10年以上経過しています。
運転手により、「シートベルトをお締め下さい」とかいちいち言われないかもしれませんが、後席回りに啓蒙シールなどが貼られているでしょうし、常識ですので、後席シートベルト未着用の場合は、乗客の自己責任も問われ、全て運転手の責任とはならないと考えられます。
タクシー会社や運転手との話し合いで注意すべきこと
事故当初、興奮状態にあると、気が大きくなり「こんなことになったんだから、運賃をタダにしろ!まけろ!誠意を見せろ!」などと言いたくなるかもしれませんが、絶対にしないでください。
運賃と事故は切り離して、落ち着いて所定の料金をお支払いください。
そういうことをすると、自分で自分の首を絞めることになります。
警察に連絡して来てもらいますから、そのようなことにはならないと思いますが、暴言や度を越したきつい言い方をすると、タクシー会社に誠実な対応をしてもらえないことも起こりえます。
運転手は金払いの悪い客を最も嫌います。それはその分運賃を乗客から回収できなければ、自腹を切らなければならないからです。
運転手に落度があってもそういう態度の客には、会社にもよりますが、事故処理係ではなく、クレーム処理係が対応することになるケースもあり、話がまとまらなくなることも考えられます。
落ち着いて、主張すべきところは遠慮せずに主張して、円満に解決するように努めて下さい。
まとめ
最後にまとめると、
- タクシーの急ブレーキや急停止が原因の追突事故は、状況にもよるが運転手にも過失があるケースもあり、様々な事情・状況により急ブレーキを踏むこともあります。
有効な対処法は、「タクシーの後続車両に付いて走行することになったときは、広めの車間距離と、急停止するかもしれないと警戒して、あまり近づかないようにする」のが、唯一無二の最善の対処法です。
- 乗車中の怪我に関しては、症状がある場合は即申し出て、すぐに病院に行き診察を受け診断書を書いてもらい、タクシー会社や保険会社と示談交渉をする。(その際の運賃はしっかりと支払う)
有効な対処法は、「乗車後すぐに後部座席もシートベルトを締める」これで、急ブレーキを踏まれてもある程度は身を守れます。
あくまでも、運転手としての経験上および調査したことをまとめていますので、実際に事故があった際の過失の割合などは、ケースバイケースで変わってきます。
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