タクシーは中・長距離を好み、短距離を嫌うのが一般的に知られていますが、では長距離とは具体的にどこまでが限界なのでしょうか?
また長距離のご乗車の場合、ある一定の運賃を超えると「遠距離割引」が適用されますが、その料金体系のしくみ、そして嫌がられたり乗車拒否されたりすることもある、タクシーの長距離事情について取り上げます。
この記事に書いてあること
✅タクシーは一乗務の走行距離において上限があり、長距離客は場合により乗車拒否が可能。
✅「タクシーの長距離走行」における問題点
✅「遠距離割引」の料金体系やしくみ
タクシーの走行距離で(一日または一乗務)の上限
タクシーは一乗務での走行距離の上限が定められています。
タクシー会社の勤務形態は「日勤勤務」と「隔日勤務」があるため、それぞれおよそ100km程差があります。
⇒「日勤勤務」と「隔日勤務」の解説はここをクリック!
理由は、隔日勤務は一乗務がおよそ20時間くらいになるので、距離はその分長く設定してあります。
地域により異なりますが、例えば、近畿運輸局の管轄下における大阪や京都などの指定区域では、出庫から入庫までの距離が、
- 日勤勤務:275km
- 隔日勤務:350km
(※高速道路は、利用距離の1/4を乗じた距離で算出する)
となり、規則上は上記の距離をオーバーすることができません。
関東や北海道など微妙に距離は異なりますが、概ね上記の距離と同等です。
これは、お客様の安全を最優先に考え過労による事故を防ぐとともに、過剰な競争を抑制するためです。
また、各地域の運輸局が公示している乗務距離の最高限度より、タクシー会社が自主的にそれよりも少ない距離を上限としている会社もあります。
タクシーの長距離は嫌がられたり乗車拒否されたりすることも
公共交通機関が動いている日中は、長距離客はほとんどいませんが、21時頃を過ぎた飲食店などにお迎えに行ったり、終電が終わる頃になると出始めます。
また、台風や雪などの天候不良や鉄道事故などで、交通機関に乱れが生じた場合は、長距離客が増える傾向にあります。
タクシー運転手にとって、長距離客が全て嬉しい「おいしい客」かと言えば、必ずしもそうではありません。
乗車拒否することもあります。
タクシーは基本的に乗車拒否はできませんが、あまりに遠方の場合は乗車拒否することは可能です。
地域やタクシー会社、個人タクシーなどにより異なりますが、目的地が営業地区の境界線から50km以上遠方の場合、乗車拒否できるとされています。
また他にも、いくつか理由がありますので、以下にまとめます。
タクシーの長距離で乗車拒否される4つの理由
定められた勤務時間内に帰庫できない
長距離客の場合は、帰ってくる時間も考慮しなければならないので、勤務時間が定められた時間よりオーバーする場合は、お断りすることもあります。
また、都市部のタクシー会社などでは、1台の車を日勤と夜勤で2人のドライバーが交代して使用している場合は、時間内に戻れないともう一方のドライバーに迷惑をかけることにもなり、社内事情も絡んできます。
燃料が足りない
法人タクシーは9割方LPG(プロパンガス)車です。中にはプリウスなどのガソリン車もありますが、LPG車が圧倒的に多く、LPGオートスタンドは都市部では深夜も営業していますが、地方だと朝から夕方までの営業が一般的です。
燃料補給後に頻繁に走行したあと長距離客を引いた時、目的地によっては燃料が足りないことも起こりえます。そのため、やむなくお断りすることもあります。
乗り逃げが怖い(無賃乗車)
特に長距離客の場合は、事前に計画的に準備をして乗り逃げをすることも想定しておかなければなりません。
実際に数年前、同じ県内のあるタクシー会社が深夜乗込みで、200km程度離れたところへ行き、乗り逃げをされました。
警察に被害届を出したところで、運賃を回収できなければそのまま自腹を切らされるのがタクシー稼業です。
万が一このような事態になるとも限らないので、敬遠する運転手もいます。
運転手が嫌がる
運転手も十人十色ですから、ガツガツしている人もいれば、それなりにやっていればいいという人もいます。
また、長距離の運転は長時間労働でもあり、知らない道を運転することは、普段よりも神経を使い時間がかかり疲労も増します。
よって、そこまで長距離は行きたくない・稼がなくてもいいという運転手は、上記の理由などを言って断る人もいます。
タクシーの長距離は事前に交渉する
距離にもよりますが、事情があって行き先が数十キロメートル以上の遠方になる場合は、その場で運転手と交渉することになります。
事前にお迎えに来てほしい場合は、長距離の場合は電話でのご予約の際、タクシー会社に行き先を告げていただいて、運転手や勤務時間などを考慮し(受ける場合は)配車することになります。
あまりに遠方の場合は、事前に運転手に連絡を取り、承諾の是非を確認することもあります。
都市部と異なり、地方では夜間は台数が少ないこともありますし、お受けできないこともあります。
また、近年乗り逃げや強盗などの犯罪も多発しているため、事前に身分証明書などを提示して身分を明かしたり、前金など先払いをして預けておく形にするなど、運転手から信用を得られるようにすると、引き受けてもらえる可能性も高まります。
タクシーの長距離は燃料が問題
上記にも述べましたが、法人タクシーは9割方LPG車なので、特に夜間は都市部の一部を除き、LPGオートスタンドは営業していません。
この投稿をInstagramで見る
よって、行って帰ってこれない距離の場合はLPG車では断られることもあります。
そうなると必然的にどこでも給油できるガソリン車ということになり、法人のタクシー会社でも、プリウスやシエンタ、ミニバン系の車両を保有している会社もありますので、電話で問い合わせてみるのもひとつの方法です。
また、都市部の個人タクシーは、クラウンなどのガソリン車が多く、引き受けてもらえる可能性は高まります。
タクシーの長距離移動・東京~姫路
「タクシーでいくらかかるのか?」をテーマにしたYouTube動画が投稿されています。
例えば、有名なYouTuberさんの動画で、夜間に東京から姫路間を7時間以上かけて走行しているのを12分程度に編集した動画ですが、事前交渉の仕方など参考になると思います。
タクシーの長距離はどこまで行けるのか?【結論】
・あまりに遠方の場合は、距離によっては燃料が尽きる恐れがあるためLPG車は燃料補給が難しく、特に長距離客は夜間に出ることが多く、LPGオートスタンドは都市部の一部を除き夜間は営業していない。
・あまりに遠方の場合は、勤務時間やコンプライアンスが厳しい法人タクシーより、自由が利いてガソリン車が多い個人タクシーがおすすめ。(但し、個人タクシーは都市部等の一部地域のみ)
・LPG車でも、行って帰ってこれる燃料があればOK。行き道程度の燃料しかない場合は、帰りの道中にLPGオートスタンドを調べて営業時間も考慮し、そこで燃料補給すれば行けないことはない。
実際に「タクシーでどこまで行けるか?」というのはケースバイケースで変わりますし、コンプライアンスの厳しい現代と、例えばバブル経済の頃とは時代背景も違いますので一概に「何キロメートルまでOK」とかはいえません。
タクシーで長距離を依頼されることがあれば、参考にしていただければ幸いです。
タクシーの遠距離割引とは?
地域により異なりますが、ある一定の運賃(大半が¥9,000)を超えると、超えた金額の10%が自動的に計算されて割引かれます。(中型車)
例えば、運賃が¥10,000と¥20,000の場合を例にすると…、
運賃 | ¥9,000の差額分 | 差額分の10%(割引料金) | 遠距離割引料金 |
¥10,000 | ¥10,000-¥9,000=¥1,000 | ¥1,000×0.1=¥100 | ¥10,000-100=¥9,900 |
¥20,000 | ¥20,000-¥9000=¥11,000 | ¥11,000×0.1=¥1,100 | ¥20,000-1100=¥18,900 |
このように、「運賃の10%」ではなく、「¥9,000を超えた金額の10%」が割引になります。
メーターが¥9,000を超えた時点で、「遠距離割引」の表示が出て自動計算されていきます。
過度な割引制度ではありませんので、予めご了承ください。
タクシーの長距離移動例
ここでは、過去に管理人が長距離移動をした例を紹介します。
ケース1:事情があって急遽帰宅したい
旅先や出張先、レジャーで遊びに行ったときに、何かしら急用ができてすぐに帰宅しなければならなくなって、タクシーを利用されるケースです。
クルマで高速道路を走行すれば、電車移動より1~2時間早く帰宅することができる場合は、交通費はタクシーの方が高くてなっても、とにかく早く帰ることを優先し、日中であってもタクシーで長距離移動される方もみえます。
ケース2:外せない仕事で公共交通機関が利用不可
台風一過のあとや降雪時など、電車・飛行機・バス等の公共交通機関が利用できなくなり、出張でどうしても仕事が外せないことがあって、タクシーを利用されるケースです。
台風上陸中の嵐の中の移動は危険ですが、過ぎ去ったあとで、電車などは線路の安全確認をしてから運行されるなど、すぐには動かないことが多く、タクシーで目的地に早く行きたい方もみえます。
ですが、このようなときは高速道路も封鎖されていたり、解放されていても速度制限されていたりすることも多く、一般道は平日は特にトラックが多くて、大渋滞になることもあります。
ケース3:外人客が旅先ホテルから直接主要駅・空港まで
コロナ禍以前は、外国人観光客が旅先のホテルから、最寄りの駅ではなく県外の主要駅や空港まで直接行かれる方もみえました。
言葉が通じないため、駅で電車に乗るのが不安であったり、路線を乗り換えなければならなかったりする場合、お金持ちの外国人は、タクシーで長距離移動して主要駅や空港に直接向かった方が、安心して楽に移動できるからでしょう。
ケース4:深夜帰るにも帰れなくなった
深夜に自家用車で帰宅中にその車両にトラブルが起きて、電車も動いておらず帰るにも帰れなくなり、タクシーを利用されるケースです。
一度あったのが、県外のお客様が深夜に24時間営業のセルフ式ガソリンスタンドでガソリンを補給するつもりが、何をどう間違えたのか「灯油」を入れてしまって、クルマが動かなくなり、管理人が呼ばれたケースがありました。
60代前後のオバサン4人組で、お喋りに夢中になり、ガソリンと灯油を間違えるというありえないことをやらかした方がいて、県外の山奥まで深夜お送りさせていただきました。
まとめ:一乗務の走行距離に上限あり・長距離客は乗車拒否可能・遠距離割引あり
最後にまとめると、
- タクシーは一乗務の走行距離に上限がある。
- タクシーは長距離客において、いくつかの理由により乗車拒否することができる。
- 身分を明かしたり、前金としていくらか預けるなど、運転手に信用されるようにすると好感が持てる。
- タクシーはある一定の運賃(大半が¥9,000)を超えると、超えた金額の10%が割引になる。(大阪など一部地域を除く)
経験上、時間帯や頻度は夜間が大半ですが、長距離客を引いても、遠方でも隣県くらいまでが、ごく稀にあるくらいが実状です。
ただ、運賃が¥10,000以上を超えるような距離を行ってくれと言われると、顔や身なり、言動などの特徴を普段よりも気を付けて運転手は見ています。
運賃は払ってもらえそうか、おかしな人ではないかなど、何気なくチェックしているものです。
滅多に長距離客を引くことはありませんが、タクシーは動く密室なので、夜間に初対面のお客と長距離を走行することは、少なからず緊張しますが、無事目的地に着いてお支払いいただくとその分いつもよりホッとします。
お客さんから感謝されると、嬉しいものです。
コメント