「塔の上のラプンツェル」は、ちょうど10年前の2010年に公開された、アメリカのディズニー映画で、長編作品としては50作目、初の3Dで描かれたプリンセスストーリーです。
現在の3Dディズニーアニメのクオリティーに近く、絵もキレイで質感も高く仕上がっています。
また、「塔の上のラプンツェル」の原作は、グリム童話の「ラプンツェル」で、子供向けではなく、性的・残酷な描写も描かれており、その過激な内容をディズニーアニメらしく、おだやかでロマンティック、ハッピーエンドのストーリーに大幅に変えています。
今回は、原作のグリム童話「ラプンツェル」と「塔の上のラプンツェル」から学ぶこと、劇中における作者の伝えたいことやメッセージ、人生のヒントなどを個人の私見としてまとめています。
原作「ラプンツェル」から学ぶ考察
まずは、グリム童話の原作「ラプンツェル」のあらすじを短くまとめてみました。
あらすじ
体調が悪くお腹に子供がいる妻のために、その妻が欲しがったため、隣に住む妖精が家庭菜園をしている野菜を、夫が盗む行為を繰り返し、やがて妖精に見つかってしまいゆすられてしまいます。
その生まれてくる子を、妖精に譲り渡す取引を夫はしてしまうことになります。
無事生まれた赤ん坊は、その野菜名をそのまま彼女の名前にした「ラプンツェル」と名付け、取引通りに妖精に引き渡し、妖精は森の奥地の高い塔に幽閉されてしまい、誰に知られることもなく12年の歳月が流れていきます。
「塔の上のラプンツェル」と同様に、「髪を垂らしておくれー!」などと叫び、妖精の塔の出入りは、ラプンツェルが長い髪を垂らします。
ある日、王子が森の中に来た時に、ラプンツェルの歌声に誘われて塔を発見し、妖精の塔の出入りをそばから隠れて見て、その真似をすると塔の上のラプンツェルは、王子を引き上げます。
そして仲良くなり、いつしか肉体関係になり王子は何度も訪れることとなり、彼女は妊娠します。
妖精はそれを知り激怒し、彼女の髪を切り落とし塔から追い出し、厳しい環境の中で男女の双子を出産します。
一方、何も知らない王子はいつものように「髪を垂らしておくれー!」と叫ぶと、妖精は切り落とした髪を垂らして塔の上に上りますが、真実を知り絶望し塔の上から飛び降ります。
一命はとりとめたものの両眼を失明し、数年間森の中をさまよい、偶然にも彼女と再会します。
お互い泣いて喜び合い、彼女の涙が王子の目に落ちると、奇跡が起こり目が見えるようになり、ふたりは、王国に戻り、幸せに暮らしました。
愛する者のために人の道に外れることをしてはいけない
- いくら妻の体調が悪く事情があったとはいえ、人のものを盗むということは許される行為ではないということ。
- 恩を売って弱みにつけこみ、無理難題を吹っかけてくる輩もいるということ。
- たとえ愛している人が目の前からいなくなっても、絶望しても投げ出すなということ。
- 命があれば、奇跡が起こることもある。
大雑把に言うとこれらのことが、学ぶべきところではないでしょうか?
「塔の上のラプンツェル」から学ぶ7つの考察
この作品にはいくつかのメッセージが込められています。
子供から大人まで楽しめて、登場人物も少なくわかりやすい内容ですが、作者の強いメッセージがふんだんに盛り込まれており、特に若年層に学ぶべきところも多いと思います。
(あらすじは割愛して)シーン別に7つ取り上げます。
ラプンツェルの一歩踏み出した勇気と行動力
なんといってもここがポイントだと思います。
18歳になっても母親と信じているゴーテルの言いつけを守り続けて、一歩たりとも塔の外へ出たことがない少女が、自分の誕生日にだけ空を飛ぶ光を見るのがいつしか彼女の夢になり、それを叶えるために、ゴーテルへのうしろめたさと葛藤しながらも自身の決断で、一歩踏み出した勇気とその後の行動力。
引用元:塔の上のラプンツェル
行動しなければ状況は何も変わらない。自分の意志で勇敢に立ち向かい、初めて踏み出した広い世界で様々なことを経験していく姿は、年齢関係なくこの世を生きる全ての人に精通するヒント・エッセンスがありました。
彼女の旺盛な好奇心や行動力の結果、真実を知り王国に戻ることができ、パートナーも見つけて幸せに暮らすことができた。
行動することで全てが変わる…。出会いも運命も。
勇気をもらえます。
ニート・引きこもりの方にもぜひおすすめ
ニートとは、15〜34
特に8050問題は、長期化した引きこもりによって、既に社会問題になっており今後さらに増えていくことが予想され危惧されています。
「一歩踏み出すことで世界が変わる」ことをわかりやすく描いていおり、このような方々にも訴求するストーリーで、ぜひ観ていただきたいです。
大勢で夢を歌で語り合う ⇒周囲が応援する・あとには引けなくなる
とあるレストランに入り、一見悪者のような複数のキャラが夢を歌で語り合うシーン。
人はそれぞれ異なり、個性があって希望や夢を持って生きている。
その大切さに改めて気づかされます。
そして、明るく前向きな彼女の姿につい数分前に出会ったばかりなのに、衛兵に追われているところを味方する彼らの行動もまた、既に仲間意識が芽生えたのかもしれません。
引用元:塔の上のラプンツェル
彼女の夢を追う姿や歌声は、周囲をも味方につける、言いふらして行動することにより周りが応援してくれること、また言いふらすことにより後には引けなくすることについても本作品のメッセージではないでしょうか。
また、ラストシーンで彼らがそれぞれの道で夢を実現することで、努力した結果を表していると思います。
毒親からの解放・子供は親の所有物ではない
自分のエゴのためだけにラプンツェルを育て、その後も束縛し続けるゴーテルは、軟禁していることと同じで、暴力は振るわずともある種の虐待でないでしょうか。
自立をさせようともせずに一切外へ出さない母親を、ラプンツェルはどう思っていたのか?
ただ利用されているだけと気付かなかったのでしょうか?
毒親の深い闇が描かれています。
引用元:塔の上のラプンツェル
「子供を親の所有物としてみている」ことにも繋がるのですが、「子供は親のおもちゃではない」ということにも言い換えることもでき、一部そのような親がいることも事実で、ディズニー映画は小さいお子さんも観るので、警鐘を鳴らしているという見方もできると思います。
大切なものを守るには自分が犠牲になっても構わない
ラプンツェルの自己犠牲
フリン・ライダーがゴーテルに刺されて、キズ口をラプンツェルが髪をかざして治そうとしたときに、自分は一生ゴーテルの奴隷になるから彼を助けたいと言ったクライマックスのシーン。
自分を外の世界に連れ出してくれて好きになった人を、たとえゴーテルの奴隷になり自分が犠牲になってでも助けようとした彼女の言動は、愛する人のために自己犠牲を払ってでも彼を守ろうとしました。
引用元:塔の上のラプンツェル
フリン・ライダーの自己犠牲
そして、フリン・ライダーも刺されて絶命すると悟り、彼女のために最後の力を振り絞って髪を切り落とした行為は、助けを求めることをせずに、ゴーテルから解放されて彼女に幸せになってもらいたかったからであり、彼もまた自己犠牲を払って彼女を守ろうとした。
自己犠牲を払い、自分の命や人生と引き換えに、愛する人を守り抜く二人の姿勢に感動し、このような生き方ができるのか考えさせられるワンシーンでした。
引用元:塔の上のラプンツェル
物事は反復することにより上達する
18年間毎日同じ日々を繰り返し、絵や料理、音楽・読書・ヨガなど多彩な趣味を見つけて才能を発揮したのではないでしょうか。
継続することによって、力がつく・物事が上達すること、現代においても同じような日々の繰り返しの中で、楽しみを見つけたり、個々のレベルアップを図るなど、彼女のように「明るく前向きにとらえて生きていこう」といったメッセージも込められているのではないでしょうか?
引用元:塔の上のラプンツェル
また、一番の趣味といっていい絵を描いていく中で、無意識に王国のロゴマークが入っている絵を描いていることを自分で発見することにより、王女だということに気が付いた。
これも、彼女が絵を描いていなければ自分が王女だということに気付かなかったと推測され、
「人間はどこに才能が眠っているのかわからない」
「好奇心を持って何でもやってみる・挑戦してみる」
ことにより道が開けるということを、暗示していると思います。
利己主義者には要注意!
ゴーテルは極度の利己主義者です。
利己主義とは、自己の利益を重視し、他者の利益を軽視、無視する考え方で、他者が不利益や損害を被ることも少なくないことです。
自分が長生きしたい・美しくありたいという自己の欲求を満たすために、ラプンツェルをさらい18年もの間、自由を奪い利用し続けたゴーテル。
引用元:塔の上のラプンツェル
このような利己主義者、学校であればクラスに、職場などあらゆる集団で一人くらいいませんか?
表では調子のいいことを言っていても、裏では別人のように何か企んでいるような人って、程度の差はあっても、多かれ少なかれどこにでもいるのではないでしょうか?
このような利己主義者を見極める能力も、人生において必要なことでは?と考えさせられました。
諦めない姿勢が困難を克服する
赤ん坊のラプンツェルをさらわれても、彼女の誕生日には無事に生きていること、戻ってくることを祈り、それをどこかで見ていることを信じて、灯りを飛ばしていました。
それを年に一度、王国のトップとして盛大に執り行っていたからこそ、彼女は無事にお城へ戻ってくることができました。
引用元:塔の上のラプンツェル
それは困難があっても、諦めずに、出来得ることを実行していれば、報われる・解決することもある。
そんな秘めたメッセージではないでしょうか。
まとめ:人生を有意義にするのもしないのも自分次第!
最後にこの作品から学べることは、
- ラプンツェルの一歩踏み出した勇気と行動力
- 夢を語ると周囲が応援し、言いふらすことにより、あとには引けなくする。
- 子供は親の所有物・おもちゃではない!
- 大切なものを守るには、自己犠牲も厭わない。
- 物事は反復することにより上達し、一芸にに秀でることにより身を助ける。
- 利己主義者を見極めることも大切。
- 諦めない姿勢が困難を克服する。
といったところでしょうか。
私見を交えて、勝手に考察してみました。
現状を打破するために何かに立ち向かう、一歩を踏み出し、未知の扉を自身でこじ開けたい。
そんな自分自身へ重ね合わせることにより、ラプンツェルに感情移入して、鑑賞中思わず彼女を応援した方も多いと思います。
グリム童話の原作と重なる部分もあれば、そうでない部分もありますが、現代においても学べる点が多い作品であることに変わりはありません。
2020年4月現在、国難と言えるコロナウィルス感染拡大により、世界中が危機的状況に陥っていますが、そんな時だからこそ、この作品から勇気をもらって、明日に向かう原動力にしていただければと思います。
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